〔Books〕6 ステイン_福井 晴敏
著者の「亡国のイージス」や「川の深さは」などが好きだった。読んだのは30代であったこともあり、心理戦を含んだ暴力的な展開を含んだハードボイルド系を好んだ時期でもあった。
この本もその頃に読んだことがあったことを読み始めてから思い出した。鮮明な記憶のリコールではなく、読みながら、初めて読んだのではない事は確信するが、ストーリーは覚えていない程度。
年齢を重ねたからなのか、前に比べてこのジャンルの刺激が強すぎて、文字から読み取る展開の整理が追い付かず、ストーリーの脳内ビジュアルがうまく作れなかった。
タイトルの通り、歳を取ればそれなりに、外にも内にもシミは付くものだと思う。そのシミをハードボイルドに描き、シミがまだ少ない頃にはストーリーとして読める。しかしシミが増えると些細な同調、共感してしまう箇所が多くなり過ぎるのかも知れない。
もちろん、登場人物のようなハードボイルドな人生を送っているわけでないので、共感するような場所はメインストーリーではなく、つなぎの描写の部分が多い。そしてストーリーから外れて自分のリアルに脳みそが飛んでしまう。
このところビジネス書や新書ばかり読んでいたので、久しぶりの小説だった。
やはり偏りは良くないな。本の世界もリアルと空想のバランスを取る必要があると感じた。